2025年5月10日土曜日

あの小説を読んでいた頃

もう何年前か。小池真理子さんの小説を読んでいた。墓を見下ろす家----。角川ホラー文庫の装丁を藤田新策とおっしゃる有名な画家さんが手掛けていて、この方は確か宮部みゆきさんの一連の小説の装丁も描いておられたと思うが、ピッタリのイメージであって、ぼんやりと眺めてしまうものがある。ちょっと近い所では田地川じゅんさんの絵も雰囲気があって魅せられるものを感じる。



絵に関してはいずれ機会があればと思うが、 墓を見下ろす家を読んでいた当時を区切りとして、自分は、身辺の出来事や心境がいささか変わってしまったように思う。小説そのものはいわゆる幽霊マンション式なのでここであれこれは省くが、つまりこれを読んだ直後に自分の眼に異変を発見したのだった。だから、今も振り返って、ああ、あれを読んでいた時期だなと思うのだ。

眼にはその最深部に黄斑部をいうところがある。小さいのだが光の束を集める部分なのか、ここの異常は齢ともに普通には現れるものだそうで、一旦出るとかなり厄介な部分だ。と言って症状の大小があって気付かぬままの人もあるそうだ。

なんとなく見にくい--とはその少し前から感じてはいた。でも一般的に老化の現れる年齢でもあるのであまり気にしなかった。ところが、小説を読み終えたころからそれは顕著になって、ちょっと目薬をしてみようかとか、蛍光灯の位置が悪いのだろうか、とかあれこれ考えてみたけど、蛍光灯などずっと前から同じ位置にあってなにも不自由はなかったのだ。ちょっと考えればそこじゃないことはわかりそうなものだが、とにかく当面は適当なものに原因を求めてしまうのだ。

結局あれこれの段階があって、自分はどうやら黄斑部に異常が出ているのだと認識するまでにはそれなりの時間がかかった。

なんという鈍感だろうか。しかもそれ以後も勘違いは続くのだった。随分な時間を無駄にしたのかも知れない。


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