2023年7月22日土曜日

偶然に浮き上がるイメージ

それが単純にそう見えるだけだ--と言うことはちゃんと理解しているつもりだ。しかし、それにしても、本当にそれだけなのかと言う気がしないでもないのだ。


一旦そう見えてしまうとどうしても気にはなる。上の絵は、なんという目論見もなく墨汁で描いた絵の一部だ。私は普段からこのような描き方をしている。何らかのはっきりしたものを描こうとの意図ではなく偶然に期待するのだ。いつからかその方が面白いと思うようになった。

絵に関しては、薄暗い森か林に濃い霧が立ち込めたか突然の雨に見舞われたかの印象を私は抱いた。霞んでいる感じが私にはそのように見える。しかしよく見るとそれだけではなく、ここにはかなりはっきりした男の顔が浮き出ているように見えるのだ。特に眼の部分は強いエネルギーがありそうな印象を受ける。


その部分だけを抜き取ってみよう。いちいち抜き取るまでもないのだが、よりわかりやすいだろう。ギロッとこちらを睨んでいるかなり鋭い男の眼があるように見える。こういうものが、全くの偶然で何故浮き上がってくるのか--と言うことに関して、私は正直なところかなり戸惑いを持っている。元々意図しない絵にそのようなものはなるべくなら現れないで欲しいのだ。

重ねて言うが、それが単純に偶然であることは理解している。つまりは単なるパレイドリア現象であり、だからあまり気にする必要もないと言うことも。一旦何かに見え始めたらあらゆるものが何かに見えないかと人は探し始めるものだ。その部分で病的になることは決してお勧めできないし自分でもなるべくはそうしないで置こうとは思う。しかしそれでも、やはり気にはなるのだ。

とはいうものの、世の中の心霊写真というものはほぼこれで解決すると個人的には思っている。だから、いくら眺めてもそのようには見えないと言う人はそれで良い。いや、多分その方が良いのだ。

2023年7月12日水曜日

お化けの木--2

この木の根っこは私の自宅から自転車で行ける距離にある。その形は、これこそまったく怪物としか言いようがない。私がデザインしてもきっとこんなに上手くは描けない。



頭は何に例えれば良いだろうか。説明する必要もない程それは可愛げのない動物のそれを連想させる。まるでミイラ化しているように見えるが、足も尻尾も見事に存在している。残念なのは前足らしきものが見えないことだが、しかしそれも何とでも解釈できるスタイルだ。



頭から眺めても充分に異様だ。といってもどこを頭にするかは任意だが、こっちから眺めても充分に異様だ。これひとつからでも充分にクリーチャーをデザインできるだろう。




回転させると異様さが倍加する。全くそれは、角の生えたモンスターでしかない。口がはっきりデザインされている。眼もある。しかも獰猛そうだ。口はご丁寧にちゃんと蝶番で開閉できるような感じになっている。



どこにでもある樹木を一本適当に選んでじっくり観察すると大抵どこかにギョッとするような部分を見つけることができるだろう。樹木の根っこは、それも朽ちていればなお悪魔的なイメージが隠れているのを知ることになる。

自然はどうしてこうなっているのか。それともパレイドリア現象で説明される如く、我々の側にその要因があるのだろうか。

向こうに見えているのは桜か梅の木だろうか、撮影はその時期だった。全くのどかな片田舎の道路脇の光景だ。この木が若かった頃はどんな形をしていたのだろうか。



2023年7月7日金曜日

お化けの木

実際樹木はかなり怪物的である。この木の根っこの形を見れば、実のところ彼らはイカやタコのような軟体動物ではないかとさえ思える。姿は完全に悪魔的だ。

この木は私の住まいから徒歩で行ける場所の汚れた川の土手に伸びている。いつからあるのかは知らない。川にはゴミが投げ込まれ、散乱という程ではないがあまり楽しめる景観ではない。

トリフィドの日とか、そんな名前の小説があった。あまり細かく覚えていないが、パイナップルのような形のお化けの木が動き回るストーリーだったと思う。最後は海水かなにかで、そんなアホなというほど呆気なくやられた。人類の危機は救われたのだ。最近リメイクされたかも知れない。リメイクは知らないが、そんなに簡単にくたばったら面白くないと思ってしまう。しかし歩くときの音がなかなかヘビーな響きで良かった。

ずっと以前から、多くの人の頭の中で樹木と怪物的なイメージは重なっている。想像を逞しくすれば更に多くのクリーチャーをイメージできるかも知れない。この木など、根っこは完全に危険な生物の触手だ。

樹木に関しては、歩けば色んなところに怪物が存在する。揃いも揃って愉快な形にならないのはどういう理由だろうか。枯木を描く絵かきは多いが、気づかぬうちにゾットする描画になっていることがある。なぜか描いている本人にはわからないようだ。