以前紹介した出版物には他にも興味深い記事がある。かまいたちに関連する記事でこの本を紹介した。怪奇現象博物館。そのなかには他にも興味深いことが述べられている。何もないところから突然あるものが現れて飛び回ったり移動したり、あるいは消えたり--といった具合だ。
今から三十数年まえ、まだ若かった頃、私は都内の大塚、詳しくは都電の巣鴨新田に近いアパートで一人暮らしをしていた。四畳半ほどのキッチンと三畳と六畳間で家賃45000円。集合型ではなくてこれがふたつ並んだ二階を貸し、大家が下に住んでいた。この大家とその周辺もちょっとばかり変だったのだが、それはさておく。
当時私はテクニカル系の図面を製作していた。デジタルのない時代、安物のドラフターを使ってロットリンクと専門のトレペにインキングする仕事をしていた。仕事先に出向いて何点か預かり納期の迫った分を届けると言うことを何年も続けていた。
その前は、駒込のより小さなアパートで、まったく布団がやっと敷ける程度の狭い六畳間でアナグマのような暮らしをしていた。当時はようやく仕事が忙しくなっていたし多少の金銭的余裕も生まれてきたのでちょっとはマシなところへの転居を決意したのだった。
何となく大塚近辺を選んだ。理由は大したことではないが、浅野ゆう子が主演した何かのドラマに大塚駅前辺りの喫茶店がテレビ画面に出てきたと、勘違いかも知れないがぼんやり記憶していた故だ。そこから歩ける範囲を何点か探したが、不動産屋が紹介した二軒の内の一軒に決めた。それが巣鴨新田付近だった。もう一軒はちょっと変わった雰囲気で面白かったのだが、裏が銭湯になっていて夏は暑そうな気がしたのだった。
ここでちょっと気になることがあった。結局そこに決めたアパートは、最初ちょっと不動産屋が懸念を示したのだ。あなたは部屋にずっと居るのと訊いたうえで、どっちかといえば、通勤している人の方が…と言っていたのだ。ところが後には、いやいいんですあれは、入っちゃえばいいんですよ--と言うことになった。
私はあまり気には止めなかった。
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