何度も断って置く。私はここで作り話はしない。タンタンと起きたことを述べるのみだ。他人の判断は私にはどうにもならない。
さて、倉庫か保管庫であろうと思われたところに、どうやら年配の女性がひとりかふたり住んでいることがわかってきた。顔をジロジロと眺めたことはない。だから、もしかふたりだとすると、互いに似ているのだろうと思われた。私の感じではふたり居たのではなかったかという気がしている。
私は素浪人にようなひとり者なのでベランダに洗濯物を干したりはしない。付近のコインランドリーで洗ってきたのを部屋干しするくらいだ。部屋はベランダに面していて、開け放っているとそこから猫が入ってくることは前に述べた。ベランダは大家が使用しているから、混じるのも嫌だった。
ある時外出から戻ってきたときに洗濯物を干す女性があった。件の年配女性だ。全体の雰囲気が大家の主婦に似ている。恐らくその姉か妹だろうと推測できた。つまり、怒鳴り声を発している人の伯母さんか叔母さんだ。ややこしいから以後はオバサンとする。どっちでも自分には関係ないが、どうやら男と世帯を持たずにそこに住まいしている。ちょこっと頭を下げて挨拶をしたが相手はまったく反応を示さなかった。不愛想だが、どうやら周りは見ないことにしているように思えた。単なる不愛想とかではなくて、そんな感じなのだ。
大家との関係は知らないが、どうやら娘とは険悪だったようだ。娘が怒鳴っている相手はこれだった。あるときも激しい怒鳴り声が聞こえてきた。言葉はここでは書かぬがかなり汚いことを言っていた。何事かと思った私はベランダに出てそっと庭を上から眺めたら、窓を半開きにして庭向こうの大家の部屋を怖い顔をして睨んでいる主婦の顔が見えた。
大家の住まいは物陰になって見えない。その見えない部分から娘が野太い声で怒鳴っているのだった。
あまり調べもしないで入ってしまったが、どう見てもこれは異常だった。
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