最初に気付いたのがいつだったかはもう覚えていない。多分、あまり気にしなかったのだろう。ついでに言えば、鈍感な私はその後もずっと異様なことが起きているとは思わなかった。
当時私は図面関連の仕事をしていた。仕事は今も同じだが、当時はパソコンなどない時代だった。あったかも知れないが仕事ができるようなものじゃなかった。そっちの世界の人なら知っているだろう、専門のトレース用紙にロットリンクなどで墨入れしていた。大抵は外形の太目の線と内側のアールなどを示したりハッチングを入れるための細い線で書き、ゴミや埃があるとしくじるので羽箒で払いつつの仕事だった。
あるとき、ペンを持ち換えようと視線をペン立てに移したら、そこに長い髪の毛が乗っていたのだ。ついさっきまでそんなのはなかった。ストレートで30から40センチくらいの長い髪の毛だった。ちょっと手を休めたりペンを持ち換えたりするのにペン立てと手はしょっちゅう往復している。髪の毛は瞬間に現れたのだ。明らかに女性のものだった。
なんだろうなと思いつつ、そんな時はなかなかピンと来ないものだ。アレッとは思いつつ、何の気なしにゴミ入れに捨てた。ティッシュで丸めたかそのまま捨てたかはもう覚えていない。そして、これが最初だったかどうかすら、もう覚えていない。多分、何度目かだったと思う。既に何本か、それまでに出ていたのだ。
当然こう考える。天井にくっ付いて居るのが落ちてくるのじゃないか。気になり始めた頃ちょっと調べてみたのだが、そんなことありそうもない。あっても何本もはない。
何だろうなとは思いつつ、眼の前には仕事がある。そんな日々だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿