当家の裏は長いこと空き家になっていた。別に住人に何かあったとかじゃなくて、勤務の都合で近いところで借家を借りているらしい。賃貸に関しては補助なんかもあるらしいのでそういうこともできるのだろうか。しかしもう長いこと、20年くらいにはなるだろうか。裏通りはあまり顔を合わせることがないので町内なんかで奥さんだけ見知っている状態だった。
一家は少し変わっていて、二階で座敷犬を飼っていて、それがほぼ一日走り回って吠えている。日中は一家が出ていくので、その間ずっと吠えている。嫌なのは、ベランダに面した引き戸を、かなり寒い日でも開けっ放しにしていて、そこからベランダ越しに当家に向かって吠えてくる。これが日常だった。こちらは夜勤で、昼間寝ているのでそれはもう大変だった。
どころか、子供が二人いる気配で、つまり新婚だったらしくて子供ができたのだが、これが頻繁に鳴き声を立てる。普通なら、それだけでかなり煩いと感じるものだが、子供のことはしょうがない。そっちは我慢した。でも犬は大変だった。
その一家がある日家を空けて出て行った。事情は上述の通りだ。と言っても聞いた話に過ぎない。以後空き家で、ご亭主が時々家の様子を見に来ている程度だった。そこに、ある日突然明かりが灯って子供の声が、ある時はかなり賑やかに聞こえてくるようになった。きっとご亭主は家を売ったのだろうと思った。そこに新たな住人がきたのだろう。子供の自転車もある。
ある朝、斜め裏隣り、つまりその家の隣の奥さんとゴミ出しで遭遇。その話をしてみた。
「どなたか越してこられたのですか、声が聞こえますが」
が、奥さんはよくわからないと言う。もうしばらくになるのに挨拶がない。それがけしからんという訳じゃないが、しかし挨拶がないと誰がいるのかわからない。町内からの連絡もない。
町内に入らなくても一向にかまわないが、一家で越してきて、例え一時であっても近所には挨拶するものだと思うけど、そうじゃなくなっているのが今の世の中のようだ。
それはそれで、ちょっと気味悪いのだよな。
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