件の女性とは凡そ一年半ぶりか。視えると言っていたあの女性だ。その後すぐに話の続きが訊けると思っていたが種々の事情で叶わなかった。連絡場所になっていた居酒屋が臨時休業になってしまった。
女性は周辺の居酒屋からは、実のところ少々敬遠されている風でもあることも分かっていた。一軒などは事実上の出入り禁止か。だからもう、多分会うことはない…。
ところが先日、ある居酒屋に偶然入ってきた。バタバタと複数で。どうやら先客と待ち合わせていたようだ。まだ夕方前の早い時間だった。この店だけが何故か早く開くので周辺をちょっと歩いた後に立ち寄ったのだった。
すぐにわかったので一応の挨拶をしたが、相手は無視していた。忘れているのかも知れぬと思い尚も声をかけてみたが、何度も目線が合っているのに無視。
変だ。初対面の相手の勘違いでも無反応はない。
だがそれならしょうがない。以前からの話はもうないことになる。だが、それならそれでこちらとしてはちょっと気味の悪さが残る。女性は更なる別の霊能者に電話を入れて、私の写真を撮影して送っている。そこまでやっていて、無反応はない。それなりの事情はあるのかもしれない。虚言性なのか、まあ、多少その気があったとしてもそれでも話が変。
こちらとしてはもう深入りはしないし相手を探ることもしない。金銭が絡んだ話でもないし、別に相手が、ちょっと変ではあってもそれだけのことだ。
どんな身の上なのか、と言うことに関してはちょっとばかり興味をそそられるが…。
ひとつ気になった。後ろのテーブル席から時折聞こえてくる彼女の話し声が、以前とかなり違うのだ。もっと太い声で、語調も妙に違っていた。本人に間違いないのだが。なにしろ個性的な顔立ちで、間違えようがない。自分たちの仲間内ではそうなのだろうと解釈するほかはない。