2024年7月30日火曜日

空間から髪の毛が出現するアパート--6

何度も断って置く。私はここで作り話はしない。タンタンと起きたことを述べるのみだ。他人の判断は私にはどうにもならない。



さて、倉庫か保管庫であろうと思われたところに、どうやら年配の女性がひとりかふたり住んでいることがわかってきた。顔をジロジロと眺めたことはない。だから、もしかふたりだとすると、互いに似ているのだろうと思われた。私の感じではふたり居たのではなかったかという気がしている。

私は素浪人にようなひとり者なのでベランダに洗濯物を干したりはしない。付近のコインランドリーで洗ってきたのを部屋干しするくらいだ。部屋はベランダに面していて、開け放っているとそこから猫が入ってくることは前に述べた。ベランダは大家が使用しているから、混じるのも嫌だった。

2024年7月23日火曜日

空間から髪の毛が出現するアパート--5

間に話を入れてしまった。例の女性のことがあったので一応は記録して置きたかった。現実にはあの通りだ。どうやら虚言性めいた女性であることは間違いないようだが、それにしても飲み友達は居るしで、妙な世界だと思う。



話を戻そう、空間から髪の毛が出現する奇妙なアパートの話だ。都電の巣鴨新田駅から歩いて数分の、一階に大家一家が住まいし二階の二部屋を貸しているがベランダに面した方を私が借りていて隣りはまだ空き部屋になっている。大家一家、つまり亭主とカミさんは何らかの商売をしていて昼間は仕事に出ている。家に居るのはドスの効いた野太い声を出す--多分娘--と思われる女性ひとりだった。

2024年7月19日金曜日

探していたあの女性更に

視える--という例の女性と居酒屋で遭遇したことを先日書いた。その態度が予想もしなかったことも。相手はとにかく私の写真を撮っている。しかもある程度密な話もしている。それでいて完全無視は考えられない。



ところがこの女性は周辺では既に有名で、そんな感じの女性ではあるらしい。思い付きで色んな事を言って、後で覚えていないとか。

虚言性か。それにしても会った人間を覚えていないことはないだろう。なにか都合が悪かったのか。しかしとにかくそのような癖の女性なので周辺ではなにかとトラブルがちなのだそうだ。

2024年7月10日水曜日

探していた女性と遭遇した

件の女性とは凡そ一年半ぶりか。視えると言っていたあの女性だ。その後すぐに話の続きが訊けると思っていたが種々の事情で叶わなかった。連絡場所になっていた居酒屋が臨時休業になってしまった。

女性は周辺の居酒屋からは、実のところ少々敬遠されている風でもあることも分かっていた。一軒などは事実上の出入り禁止か。だからもう、多分会うことはない…。

ところが先日、ある居酒屋に偶然入ってきた。バタバタと複数で。どうやら先客と待ち合わせていたようだ。まだ夕方前の早い時間だった。この店だけが何故か早く開くので周辺をちょっと歩いた後に立ち寄ったのだった。

すぐにわかったので一応の挨拶をしたが、相手は無視していた。忘れているのかも知れぬと思い尚も声をかけてみたが、何度も目線が合っているのに無視。

変だ。初対面の相手の勘違いでも無反応はない。

だがそれならしょうがない。以前からの話はもうないことになる。だが、それならそれでこちらとしてはちょっと気味の悪さが残る。女性は更なる別の霊能者に電話を入れて、私の写真を撮影して送っている。そこまでやっていて、無反応はない。それなりの事情はあるのかもしれない。虚言性なのか、まあ、多少その気があったとしてもそれでも話が変。

こちらとしてはもう深入りはしないし相手を探ることもしない。金銭が絡んだ話でもないし、別に相手が、ちょっと変ではあってもそれだけのことだ。

どんな身の上なのか、と言うことに関してはちょっとばかり興味をそそられるが…。

ひとつ気になった。後ろのテーブル席から時折聞こえてくる彼女の話し声が、以前とかなり違うのだ。もっと太い声で、語調も妙に違っていた。本人に間違いないのだが。なにしろ個性的な顔立ちで、間違えようがない。自分たちの仲間内ではそうなのだろうと解釈するほかはない。


2024年7月1日月曜日

空間から髪の毛が出現するアパート--4

猫は、当初思っていたよりも多いことがわかった。いつの間にベランダに枕がいくつか置かれていて、その上に猫が寝るようになっていた。大抵は用心深いがまったく馴れているのもいて、窓を開けているとこっそり入ってきて、仕事をしている私の椅子の後ろにちょこんと座っているような猫もあった。触っても怒らないでじっとしている。



そういうのは可愛いので入ってきてもそのままにしていた。一匹入ってくるとゾロゾロ続いて入ってくる事もあったが、そいつ等は近づくと出ていく。馴れている猫はおとなしくて抱えることができるので外出するときも困らなかった。掴まえて 窓から出せるのだ。どうしてそんなに馴れているのか知らないが可愛いのでそんな生活がしばらく続いた。下で餌をもらっているだろうから私がそれをすることはなかった。