それが単純にそう見えるだけだ--と言うことはちゃんと理解しているつもりだ。しかし、それにしても、本当にそれだけなのかと言う気がしないでもないのだ。
一旦そう見えてしまうとどうしても気にはなる。上の絵は、なんという目論見もなく墨汁で描いた絵の一部だ。私は普段からこのような描き方をしている。何らかのはっきりしたものを描こうとの意図ではなく偶然に期待するのだ。いつからかその方が面白いと思うようになった。
絵に関しては、薄暗い森か林に濃い霧が立ち込めたか突然の雨に見舞われたかの印象を私は抱いた。霞んでいる感じが私にはそのように見える。しかしよく見るとそれだけではなく、ここにはかなりはっきりした男の顔が浮き出ているように見えるのだ。特に眼の部分は強いエネルギーがありそうな印象を受ける。
その部分だけを抜き取ってみよう。いちいち抜き取るまでもないのだが、よりわかりやすいだろう。ギロッとこちらを睨んでいるかなり鋭い男の眼があるように見える。こういうものが、全くの偶然で何故浮き上がってくるのか--と言うことに関して、私は正直なところかなり戸惑いを持っている。元々意図しない絵にそのようなものはなるべくなら現れないで欲しいのだ。
重ねて言うが、それが単純に偶然であることは理解している。つまりは単なるパレイドリア現象であり、だからあまり気にする必要もないと言うことも。一旦何かに見え始めたらあらゆるものが何かに見えないかと人は探し始めるものだ。その部分で病的になることは決してお勧めできないし自分でもなるべくはそうしないで置こうとは思う。しかしそれでも、やはり気にはなるのだ。
とはいうものの、世の中の心霊写真というものはほぼこれで解決すると個人的には思っている。だから、いくら眺めてもそのようには見えないと言う人はそれで良い。いや、多分その方が良いのだ。