どんな描画からでも、まったく予期しないものが現れることがある。私の場合、それは決してす少なくない。意図を持って描いたものからも、或いは全くの偶然性を期待したものからでも予期せぬリアルなイメージが浮かび上がってくることがあって、それこそ意図を持って描いたとしか思えないようなものが出て来る。これがとても不思議だ。
上の絵は明らかに男の顔。どこかでみた顔をしている。唇がタラコなのでいささか違っているようにも見えるが似ていると言えなくもない。想像できるのは、きっと歴史上有名なあの人物だろう。でも、ここで言いたいのはそこではない。これは単にどこの誰でもない男を描いたものだ。
あるとき、ふとひっくり返してみたのだ。するとそこには全く別の、これまた恐ろし気な顔が浮かび上がった。上目使いで顎の尖った顔立ちのあまり歓迎したくない顔が見える。性別まではイメージしにくいが、どちらかと言えば老いた女性の顔ではないか。更に言えば、中世に誰かが描いた魔女の感じでもある。
偶然に浮かび上がってくる顔のイメージはどういう訳かどれも恐ろし気だ。愉快な顔はまずない。いったいどう理由だろう。勿論私はそれを歓迎している訳ではない。どうせ出るなら愉快なイメージの方が良い。しかしそれを無理に探してもまず見当たらない。偶然に見えるものは、それが顔であれ何であれ大方恐ろし気な印象を持っている。
点が二つあれば眼に見えて、三つあれば顔に見える。それが脳の習性だと言うことは理解できる。しかも恐ろし気なものに見えがちなバイアスを、どうやら持っているらしい。パレイドリア現象のことを考えると恐らくはそうだろうとは思うのだが、愉快なものが殆ど出てこない理由の説明になるだろうか。
しばらくの間、この辺りのことを考えたい。
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絵は一般的なコピー用紙に黒の絵の具を用いて描いた。